人間ドックでは必ず検尿があります。検尿では尿中に糖や蛋白や血液が混じっていないか、ウロビリノーゲンがたくさん出ていないかを調べ、その後尿を遠心分離機にかけてその上澄み液を顕微鏡で見ます。顕微鏡で白血球や赤血球や腎臓から剥がれ落ちたものが混じっていないか、細菌が混じっていないかなどを見ます。この尿検査のことを、医療機関では沈渣と呼んでいます。
検尿で尿糖が(+)と出た場合、多くの人が糖尿病だと思うでしょう。しかし、尿糖だけでは糖尿病とは判断できません。糖尿病で尿に糖が出るのは血糖値が160~190mg/dlを越えた時と言われています。そこで医師は血糖値を見ます。
血糖値が160~190を超えていれば、糖尿病による尿糖だと考えられますが、血糖値が正常なのに尿糖が(+)の場合もあります。この場合医師は、腎臓に何らかの異常があるのではないかと考えます。腎臓では、体に必要なものは再吸収し、必要のないものは尿として排泄しています。ところが腎臓に異常が生じると、体に必要な糖や蛋白をうまく再吸収できず、尿中に漏れ出てしまいます。
そのため糖尿病ではなくても、尿糖が(+)になることがあるのです。腎臓の異常を疑った医師は、尿沈渣の結果を見たり、クレアチニンや尿素窒素(BUN)で腎機能を確認します。最近は本屋さんに行くと、検査データの見方といった書物も並んでいますが、人間ドックの検査データの読み取りはもっともっと奥が深く、医学的知識のない素人が医師と同等の判断をすることは不可能です。尿に糖が出ているのにどうして腎臓の検査なのか、と疑問に思うかもしれませんが、疑問点は担当医に尋ねて納得した上で必要な精密検査を受けましょう。
人間ドックで精密検査が必要となったにもかかわらず、そのまま放置することだけは、あってはなりません。
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